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背景と研究目的
都市に人口,交通,物流が集中し,多量のエネルギーと物資が局所的に消費されている。その結果,ヒートアイランド現象,大気汚染など都市環境は悪化の一途をたどっている。都市環境問題を詳細に分析し現状を正しく把握するには,排熱や大気汚染物質(NOx,浮遊粒子状物質など) の移流拡散過程を正しく予測・評価できるモデルの構築が急務である。 ところが,都市部における熱や物質の移流拡散過程は,下左図に見られるように,建物群や丘陵(複雑地形) が存在するために単純な平原のそれとは比較にならないほど複雑である。現在の乱流モデルはこれを高い精度で再現できるレベルにはない。本研究では,都市スケール移流拡散現象の予測技術の基礎となる次世代乱流モデルを,申請者らが有する知識,経験,技術を動員して構築する。

具体的な目標は,

1)都市スケールの熱・物質移流拡散現象を工学的な視点から解明し,素過程を抽出する;
2) 移流拡散現象を再現できる信頼性の高い素過程乱流モデルを開発し,それを統合することにより次世代乱流モデルを構築する,

ことである。


環境汚染物質の拡散過程
NOx, SPM(浮遊粒子状物質)など


研究のアプローチ
研究の学術的な特色・独創的な点及び結果と意義
都市スケールの熱・物質移流拡散過程のシミュレーションでは,工学的視点で開発された乱流モデルは採用されないのが普通である。これは,工学モデルが対象とするミクロスケール (たとえば,1 mm 〜 1 m) と気象モデルが対象とするマクロスケール (たとえば,10 km 〜 10,000 km) が隔絶していて,それらを合理的に接合することが難しいからである。つまり,両モデルは,基本的には同じ物理現象を対象としながらも現象をモデル化する過程に差異があって,別個の系 (モデル) として取り扱われている。一方,都市空間における中間スケール (メゾスケール:たとえば,1 m 〜 10 km) の移流拡散過程のシミュレーションでは,伝統的に気象モデルもしくは大スケール現象のみを考慮した乱流モデルが用いられている。ところが,申請者らの最近の研究によると,都市スケール (メゾスケール) 現象のモデリングにミクロスケール現象を的確に捉える工学乱流モデルの概念を持ち込むことにより,予測精度が大幅に改善されることが明らかになってきた。本研究の特色は,すでに十分な実績がある工学乱流モデルを中間スケールへと展開する独自のアプローチ (上右図) によって,都市環境にかかわる種々の移流拡散現象の解析精度を大幅に向上させ,信頼性の高い予測評価システムを構築することにある。
 
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